2010年4月18日

井上ひさしさんと「こまつ座」

井上ひさしさんが亡くなった。
こまつ座のお芝居はこの20年ずっと観てきた。
「頭痛肩こり樋口一葉」以来、新作、再演とほんとにたくさんの作品を楽しませてもらった。
このコーナーに取り上げた作品もいくつかある。
「日本人のへそ」「表裏源内蛙合戦」「薮原検校」「きらめく星座」「国語元年」「闇に咲く花」「人間合格」
「黙阿弥オペラ」「父と暮らせば」「紙屋町さくらホテル」・・「太鼓たたいて笛ふいて」などなど・・・
どれも面白くユーモアにあふれて、その中に深い人間への思いや洞察、時代に鋭い眼をむけた作品で・・
心に深く残るものばかりだ。
樋口一葉や平賀源内、小林一茶、太宰治、林芙美子、道元など・・の素晴らしい評伝劇も多いが戦争と戦後を見据えたたくさんの戯曲。
井上ひさしさんの作品はユーモアと笑いに包まれてはいるが・・その中には重いテーマと井上さんの怒りが渦巻いている。
井上ひさしさんのモットーは「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、ゆかいなことはゆかいに!」と言ってたのを思いだす。
本当にその通りの作品ばかりだった。
以前にも上演された庶民の戦争責任を問う東京裁判3部作「夢の裂け目」「夢の泪」「夢の痂」の連作上演が始まっている。私も5月には2作目「夢の泪」を観にいく。もちろんどれも2回目である。
2001年から2006年にかけて井上さんが書き下ろしたもので、「東京裁判」は井上ひさしさんのライフワークともいえる問題作です。
裁判のシーンや歴史上の有名な人は全く登場せず、平凡な生活を営んでいる庶民の目からみた「戦争」の真実を問う作品です。重いテーマなのに・・笑いと音楽で、楽しく、面白く、そして切なく・・・私たちに訴えてくれます。

井上ひさしさんの残した作品はまたこれからもずっと「こまつ座」とともに生き続けると思う。

井上ひさしさんのご冥福をおいのりいたします。

高原陽子

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