2010年1月31日
キャバレー
先日、ブロードウエイミュージカル「キャバレー」を観た。
今回は藤原紀香主演、相手役の売れない作家は阿部力、小池修一郎演出である。
この作品は1966年のブロードウエイ初演以来、世界中で繰り返し上演され、ライザ・ミネリ主演の映画化でも有名なミュージカル史上に輝く名作です。
物語は、1929年のベルリン、第一次世界大戦のショックから立ち直れず退廃した町、ナチスドイツが台頭するベルリンのとあるキャバレー「キット・カット・クラブ」が舞台。ここに出入りする人々の愛と憎しみ、出会いと別れが描かれています。
ベルリンを訪れた米国人作家クリフ(阿部力)はキャバレーの歌姫サリー(藤原紀香)と恋に落ちる。
一方、下宿屋の女主人シュナイダー(杜けあき)はユダヤ人の果物屋シュルツ(木場勝巳)との老いらくの恋、
どちらも時代の流れの中で破局に終わってしまう。
舞台の開演頭初、中央につるされた地球儀が皮をむいてミラーボールに変わる。キャバレーが世界と人生を映し出すことを象徴する素晴らしい幕開けだった。
あのスーパーアイドル(元)光ゲンジの諸星和己が進行役MCで歌とダンスで物語を進めていく。
「キャバレー」はたくさんの名曲と華やかなダンスナンバーに彩られた最高のエンタテイメントです。と同時に「人はなぜ戦争という悲劇を何度もくりかえすのか?」「人種差別」「男女の愛、人間模様」といった大きなテーマをもった社会性にあふれた作品です。
主役サリーの藤原紀香は美しく魅力的で、進行役MCの諸星は歌といい動きといい素晴らしく達者である。
脇を固めるシュナイダー(杜けあき)とシュルツ(木場勝巳)の説得力のある演技、味わい深い歌声がほんとに素晴らしくこころに響く。
物語の背景となっている1929年から80年も経った現代も、世界から紛争は絶えず地球上のどこかでいまだに戦争や諍いはおこっている。
しかし・・人々の営みは続いている。
MCは歌う。「そこでは女たちは美しく、男たちも美しい。オーケストラさえ美しい」人々は美しい人生を求め、美しいくらしを求めるが・・争うこともやめられない。
MCが単なる進行役に終わらず、ベルリンの猥雑な風俗を表現したり、世相を皮肉ったりして・・ほんとに面白い!
ベルリンのキャバレー「キット・カット・クラブ」は繰り返される人間の営みの縮図のようであり、現代にも通じるものである・・と痛感した。
追記・何年か前、松尾スズキ演出の「キャバレー」を観たことがある。芸達者なMC役は阿部サダヲ、サリーは松雪泰子だった。シュナイダー役の秋山菜津子が素晴らしく強烈な印象が残っている。それにしても・・この作品は名作、傑作である。