2009年12月2日
十二人の怒れる男
アメリカの陪審員をめぐる法廷劇、レジナルド・ローズ原作、1957年ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作であり、アカデミー賞にもノミネートされた「法廷もの」の最高傑作「十二人の怒れる男」。
ヘンリー・フォンダ主演で映画化されてから50年も経った今でも世界中の人々を魅了し続けている名作である。そして今年(2009年)5月から日本でも「裁判員制度」が始まりこの作品もいっそう注目をあびている。今回わたしが観たのは、シアターコクーン20周年企画公演で、演出は蜷川幸雄、主演は中井貴一の舞台である。
ストーリーは、ニューヨーク地裁の陪審員室。父親殺しの罪で一人の少年が裁かれようとしていた。審理は終わり、いまや少年の運命は12人の男たち(陪審員)に委ねられている。
12人の陪審員たちは予備投票を行う。有罪11票、無罪1票、唯一の無罪票は陪審員8号(中井貴一)だった。
全員一致で有罪とすれば少年は死刑になる。・・・8号は周囲の人たちのいらだちに怯むことなく、陪審員の責任の重さと審理への疑問を語り・・討論は白熱してゆく。
8号を演ずる中井貴一さん、穏やかでしんぼう強く、人間的な温かさが伝わってくる。
沈着で重厚な辻萬長さんの4号、老人の孤独さが伝わってくる品川徹さんの9号、移民の11号(斎藤洋介さん)
貧民街育ちの5号(筒井道隆さん)・・・そして3号の西岡徳馬さんが激しく8号の中井貴一さんとの対立がすごい!!
この作品は単に裁かれている少年の有罪、無罪を問うているのではなく・・集団の中でそれぞれの人間がどう生きていくかを問うている作品だと思う。
12人の陪審員たちにはそれぞれ背負っているものや葛藤があり、お互いに完全に理解することなどできない。。
一人一人が内面にやり場のないような思いをかかえて生きている。
正義、差別、歴史、貧困、老い、親子のつながり・・・この素晴らしい会話劇からいろんなものが浮かび上がってくる。
激しい討論のあと・・最後にさわやかな未来を感じる終わり方である。
個性豊かで素晴らしい12人の役者陣、一幕劇で討論ばかりの2時間40分・・だのに面白くて、ぐいぐい引き込まれ、観終わったあと、さわやかで強い感動をおぼえた。
満員の劇場全体が興奮と拍手の渦だった。
やはり名作中の名作だと思った!