2009年9月27日
久保田万太郎の世界
文学座アトリエで久保田万太郎の作品2本「短夜」「燈下」を観てきた。
久保田万太郎は、岸田國士、岩田豊雄らとともに「文学座」を結成した人である。
明治の浅草に生まれ、浅草を愛し、浅草を書いた作家であり、万太郎にとっては浅草がすべての文学生涯であった。
「短夜」は大正14年、作者37歳の時の作。「燈下」は昭和2年、作者39歳の時の作、この年はあの名作「大寺学校」が書かれた年でもある。
どちらも脂がのっていたころの作品である。
万太郎作品は、同じ時代に生きた岸田作品とはまたちがった味のある作品で、夫婦や家族や近所の人たちのこまごました感情をしみじみした情感で描いている。
「短夜」に出てくる専造さんのように素朴で口べた、無愛想だけど世話好き・・古きよき日本の男性の姿が描かれていたりする。また、下町に生きる人々の心情がしみじみと細やかに描かれていて・・じんわりとあったかく、また切なく・・伝わってきます。
小説家、劇作家・・そして俳人でもあった万太郎の作品は・・詩情あふれる余韻のある終わり方でこれもすごくこころに残りました。
作りこんだ舞台美術、役者陣も力量があり・・文学座ならでは・・の素晴らしい舞台でした!
秋風の吹くころにふさわしい舞台でもありました。