2007年7月2日

ノダ・マップ番外編「THE BEE」

パンフレットの前書きに、「夢が後を引く。悪夢ほど後を引く。感動するためにではなく、たまには悪夢を観てください!」

と書いてあった。・・・そのとおり、スゴイ忘れられない悪夢をみたような強烈な芝居だった!しかも面白かった!
筒井康隆の短編小説「毟りあい」を、野田秀樹とアイルランド人の作家コリン・テイーバンの共著によって戯曲化したもの。
・・脱獄した凶悪犯に妻とこどもを人質に取られた会社員が、犯人の妻子を人質立てこもり、その会社員がだんだん凶悪になっていく・・・というこわいお話。・・・ごく普通の会社員がどんどん狂気になっていき、犯人の妻子を追い詰めていく!
人間のもつ恐怖感をテーマにした芝居だ。
ノダ・マップらしいスピーデイな演出、シンプルなセットや面白い小道具もとてもユニークだ!
舞台は大きな紙が1枚、上からぶら下がっている。その紙を上げたり巻いたりして空間を変え、時には穴を開け、たたんだり、映像を写したり・・と実にいろいろに変化する。ほんとに創造豊かな演出で・・いろんなしかけがしてあって、会社員がたてこもる犯人の家と、犯人が立てこもる会社員の家が同時にみせたり・・また、別々の空間が交わったりもする。現実に考えればありえないことも、舞台では成立するのだ。
さすが野田秀樹だ・・ほんとにアイデアたっぷりで感心してしまう。

そして、小道具もいろいろあるが・・指として使われる鉛筆が面白い。1本づつ切り取られる指の音が・・ぽき!ぽき!・・と不気味に響く。
役者陣もすばらしく、会社員の野田、犯人の妻、秋山菜津子・・警官、浅野和之・・犯人、近藤良平・・・この4人。
たった4人で、10人以上もの役を演じ分ける。早代わりもすごい!

「暴力の無意味さ」についていろいろ考えさせられる・・ほんとに悪夢のように強烈な舞台だった!!

高原陽子

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